Columns|コラムシリーズ7【自分で事業を立ち上げたい人へ】全9回

第4回 資金は大丈夫か

 前回は「事業の設計の仕方」についてお話させていただきました。

 今回は「資金」についてお話したいと思います。


 事業をするにあたり資金は無くてはならないものであることは疑いようがございません。

私がここでいう「資金」とは「事業用」と「生活用」です。

「生活用」?と思われるかもしれませんが、起業するにあたっては両面を意識しなくてはなりません。

生活できないと事業できませんからね(^^)


 まずは「事業用」から。文字とおり事業をするにあたり必要な資金です。

ルール上は株式会社でも1円の資本金で設立は可能です。

でも法人登録をする際に、公証役場で定款の認証、謄本、印紙で91,000円、

登録免許税が株式会社であれば150,000円、合同会社であれば60,000円(ただし資本金の1000分の7がこれらを超える場合はその額)で、

株式会社であれば合計241,000円は最低でも「現金として」必要になります。

詳しくはこちらのURLで丁寧に紹介されていますので御覧ください。

http://www.btob-expert.net/company_knowledge/cost/


 1円の資本金でも241,000円の「現金」がないと即倒産です。

よくあるのは自分が立替えて支払います。

経理上これは未払金として負債に計上され、資本金はマイナス239,999円となります。

そうです、いきなり資本金がマイナスになるのです。

会社の状態としては一時的にはよくても恒久的には望ましい姿ではないと思います。

また事業をするにあたり色々費用がかかるはずで、

そういった費用を用意しておかなければなりません。

 こういった費用を準備する方法として一般的には「自己資金」「借入」「融資」と3つの手段があります。

 「自己資金」は文字通り自分の資産を使います。

「借入」は一般的には銀行ですが、

実績もない小さな立ち上げたばかりの会社に銀行が貸出をすることは、事実上ないと思っていいです。

他には「親戚からの借入金」などがこれに該当します。

「融資」は株式会社なら株を購入してもらって資本金に充当する方法です。

 どれも一長一短があります。私が立ち上げた株式会社のケースでお話します。

 資金を調達する際の評価軸は

・ 調達できる額

・ 調達のしやすさ

・ 調達後の債務

・ 調達後の自由度

といった視点が考えられます。

自分自身がお金持ちでなく、まだ実績もない小さな会社だったとしましょう。

すると私は以下のようなイメージを持っています。

・ 調達できる額:融資>>借入>自己資金

・ 調達のしやすさ:自己資金>>融資、借入

・ 調達後の債務:自己資金<融資<<借入

・ 調達後の自由度:自己資金<<借入<融資

 自己責任で完結できその後の裁量権を確保するという観点では自己資金であることが一番です。

大きな資金を必要とする場合は、ビジネスコンテスに出たり、

投資家が集まるようなコミュニティーに参加して自分の事業プランをアピールして調達を試みる方法があります。

このときに認識しておくべきことは「資金を出してもらったら会社はその人のものでもある」ということ。

自分が設立したからと言って、自分勝手にはできません。

出資者も会社の所有者であることを忘れてはいけないのです。

 借り入れた場合は、原則定期的に「利子をつけて返済する」という債務を負います。

債務返済が滞ると、資産の凍結などにより肝心な事業を止められてしまうことがあります。

確実に返済していけるという目処をたてることが重要です。


 私は「自己資金」のみで資本金を充当しました。

これでも開業して1年は収入も少なく個人の資金を使って立替をし

未払金という負債が大きくなり資本金が計算上あっという間になくなってしまいました。


 実はここがとても大切なことで、会社に資金をある程度充当してもその資金が足りなくなることは十分にあります。

その際に資金を充当できる手段があるかどうかは大きなポイントです。

私は会社を早期退職制度を使って退職したため、会社から退職金の加算金を受け取りました。

これが事業資金として大切な役割をしています。

自己資金で資本金に充当した上で、不足した場合も自己資金でまかなえる体制ができていたのです。

なので今のところ資金繰りで東奔西走しないで済み、

自分の事業のオペレーションに費やす時間を確保できていることはとても大きいです。


 そして「生活用」資金です。

実はこの話の流れからわかるように、事業不足金を補充する手段としても自己資金は大切で、

すなわち自分の生活資金も自己資金から捻出するとなると、

なおさら自己資金の重要性を感じ取っていただけるかと思います。

 私の場合開業してから4ヶ月無収入でした。

5ヶ月目からやっと少々の現金が入るようになり、

シェアハウスの運営を開始できたのは開業してから約1年後です。

それでも契約上は厳しいものでシェアハウスからの収入は月に数万円。

とても暮らしていけるレベルではありません。

でもここを自己資金で乗り切って、実質2期目で黒字に転換できました。

事業の方向性はよくても、途中の資金が尽きることで事業だけでなく生活もできなくなったら本末転倒です。

 起業をされて活躍されている諸先輩から「最初は“ながら起業”とか“週末起業”とかのペースで、

現在の職による生活資金を確保している状態でゆっくりと始め、

軌道に乗り始めたら切り替えるやり方をオススメする」と

異口同音におっしゃっていることを耳にします。

私も同感です。

 起業するにあたっては経験上、

「1000万円の貯金をする」か「現状の仕事と並行にすすめていく」やり方を個人的には推奨したいです。

1回きりの人生ですから、どういう生き方をするかは人それぞれの裁量です。

でもいいことばかり考えても事業は進められません。

悪いことも長いことやっていれば必ずおこります。

どんな状況でも、再び立ち直ってみせるという気概を表す一つがこの資金計画でもあると思います。



次回は「個人か法人か」という点でお話します。



「第3回 どんな事業にするか設計してみよう」

「第5回 個人事業か法人格か」

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