Columns|コラムシリーズ7【自分で事業を立ち上げたい人へ】全9回

第8回 持っていたほうがいい技量

 前回は「開業した後」の諸々のことについてお話しました。

 今回は起業にあたって「持っていたほうがいい技量」についてお話します。


 私は卒業後MBAの学位がとれるビジネススクールで経営学を学びました。

マーケティング、ファイナンス、組織マネージメント、リーダーシップ、

グローバル社会、論理的思考など様々な項目を学び、

どれも経営の礎をなりうる教養の一部とも言える学科でした。

 私はまだまだ駆け出しなので、何か結果が出た上で申し上げる、ということができません。

ただわずか2年半ほどの経験で感じた「持っていたほうがいい技量」を2つほどご紹介します。


 1つ目は「クリティカルシンキング」。

私が通っていたビジネススクールで最初に受講する人が多い科目の一つです。

論理的思考力とそれを表現する力は、事業を進めていく上で不可欠な技量だと感じています。

 ・全体を俯瞰する行為

 ・もれなく網羅するための切り口

 ・いつ話がきられても要件は伝わるアンサーファースト

 ・事実と意見も明確な区別

これらは「自分が伝えたいことを的確により確実に相手に伝える手段」として、力を発揮します。

「言ったつもりが伝わっていない」「言ってもわかってもらえない」

こういうことは日常茶飯事です。

その中で伝え方を工夫することで解決できる例も少なくありません。

事業はサービスを提供してはじめて対価をいただき、成立します。

サービスを相手にわかってもらうためには、わかってもらうような伝え方が必要です。

 受講前、説明するのは比較的得意だという自負があったのですが、

ビジネススクールでこのクラスを受講した時に、その自信は木っ端微塵に砕かれました(^^) 

自分が考えている範囲が狭くて、相手にとっては物足りない説明になっていました。

だからたくさんの疑問がわいてきます。

詳細についての疑問であれば、まだいいのですが、

私が説明した範囲で網羅していない領域となると、私の考察不足がそのまま露呈されます。

 本も売っていますが、これは実際に体験した方が格段に自分のためになりますので、

どこかのスクールやクラス、勉強会などに参加されることをおすすめします。


 2つ目は「簿記」です。私は簿記2級に合格しました。

でも簿記を受験した理由は、独立するからではありませんでした。

企業勤務で事業担当になった際、管理会計をしていた後輩に

「事業計画をたてる立場なら、経営数値につよくなってほしいです。

最低でも簿記2級くらいの実力はあってほしいところです」と言われたのがきっかけです。

元々エンジニアとして業務を遂行し管理職になってから事業計画に携わるようになったのですが、

最初は管理会計の担当者が私をサポートしてくれていました。

ところが職場が変わって、管理会計のチームを私が統括することになったのです。

「知らない」や「苦手だから」は許されません。

そこで先の後輩の言葉につながったのです。

 私が合格した時は会社を辞める直前だったので、企業勤務には直接役に立てることはできませんでしたが、

実際にビジネススクールでアカウンティングを学んだ時と、起業後に簿記はとても役に立っています。

簿記は取引内容で資産がどのように変わっていくのかをルールに沿って整理する手法で、

そのルールによって財務諸表ができあがります。

 起業をした際にP/L(損益計算表)、B/S(バランスシート)、C/F(キャッシュフロー)のイメージを持っていることはとても大切です。

事業は、必要な材料・経費を投じて、投じた額を上回る売上をたて、

その差分である利益を得る活動です。

ある期間にどれくらい売り上げて、どれくらい経費を使って、

どれだけ利益を上げたかをまとめたものがP/Lです。

企業の活動結果を表します。

また企業が有する現金、固定資産、在庫などの資産がどのように構成されて、

それがどのような資金で支えられているかを示したものがB/Sです。

そして現金の出入りをまとめたものがC/Fです。

 利益がでなければ資産を食いつぶして事業活動はできなくなります。

P/Lで管理します。

 自己資金と負債(借入金や個人の立替など)のバランスが悪いと、

資金効率が悪かったり、逆に返済に追われて苦しくなったりします。

B/Sで管理します。

 掛け金などで支払うべき時に現金がなかったりすると不渡りをおこして倒産です。

C/Fで管理します。

 そうなのです、お金のことはイマイチわからない、というのは実は起業する人にとってはまずい状況です(^^)

財務リテラシーを上げる必要があると私は感じます。

誰かに任せればいい、それはそれでコストがかかる話です。

そのコストを負担しても事業に影響がないのなら、選択肢としては存在しうるでしょう。

私のように1人で事業をしていると、任せる人はいません(^^) 

税理士に相談はしても普段の管理は自分しかできないのです。

 とはいいながら、難しい事を考えずまずは小遣い帳をつけるような気持ちでやってみるといいと思います。

レシートや領収書、メモなどは消費した実態を証明する大切なものです。

まずは「記録をとる」「証明書を残す」「記録と証明書をいつでも一致させられるようにする」ことから始めてみてください。

その上で税理士さんにご相談すると、より建設的なお話ができると思います。



 次回は最終回で個人的な所感をまとめてみます。



「第7回 開業後」

「第9回 終わりに」

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