Columns|コラムシリーズ10【ものづくりに見る価値の創造】全10回

第4回 それぞれの役割〜設計

前回は“基礎研究”と“開発”についてご紹介しました。

今回は“設計”についてです。


以前“設計”は「商品としての仕様を決める」と定義しました。いわゆる“商品化”することが役割です。“商品化”をする上での肝は「どれだけ許容するか」です。

寸法でいえば「公差」といって、ある値からどれくらいずれてもいいかを定めることです。

例えば長さ100mmの部品があるとします。仕様で「長さ100mm」とだけ書いたのではこの部品は作れません。なぜならぴったり100mmしか認められないと<作れる部品数が限られてしまうからです。

ものづくりの特徴として、かならず“ばらつき”がある、ということです。「100mm」と規定しても「100.01mm」というものが存在するのです。

では「100.01mm」では駄目なのか、です。100mmのうち0.01mmは1万分の1です。これが許せるのなら部品メーカーは喜びます。もし許されないのなら部品メーカーは泣きます。

もちろん商品の特性上許せないという状況はありえます。長さ100mmの部品で「1mm以下なら長くても短くてもいいよ」という設計と「0.01mm以下に管理して欲しい」という設計とどちらが作りやすいでしょう。


作りやすい部品は作りやすいだけ手間がかからないので安く安定して作れるでしょう。それが商品の原価の値段や品質の安定に直接効いてくるのです。

何百点もある部品ですから、ちりも積もればなんとやら、です。


おわかりでしょうか。“開発”された“機能”を商品にするためにどれだけ“作りやすい”仕様にするかが“設計”の腕の見せ所なのです。


そのために“設計”は何度も試作をして評価をします。試作とは文字通り、試しにつくることです。

評価とは、試作した部品、商品がどれくらいの性能を出すのかを測定することです。設計の初期では仕様を決める上で大事なパラメータをまず設定しそのパラメータごとに何パターンか試作するのです。

そして評価してどのあたりの値がいい性能なのか“あたり”をつけます。

次に絞り込んだところで数を増やします。どれだけ性能が安定するか評価するのです。

設計(Plan)→試作(Do)→評価(Check)→対策(Act)このPDCAをどんどん回して、仕様を固めていくのです。

“設計”の「主業務」はこういったところになります。


一方“開発”された機能を商品として成立させるためには

・十分な品質 (Quality)

・適切なコスト (Cost)

・安定した供給 (Delivery)

というものづくりのキーワード“QCD”を満足させるための仕様を決める必要があります。

そして世の中に出すためには販売地域のルールを遵守することも必要です。安全規格、不要輻射規格、難燃性、ラベル表示、バーコード規格など。

安全規格や不要輻射規格などは機関ごとにサンプルを提出して、機関の定める審査(評価)を受けて認証をとらないと、法律上販売ができません。

前回から例に出しているブルーレイを例にあげましょう。ブルーレイプレーヤーを商品化するとします。

するとブルーレイ本体の寸法や材料を決めればいいわけではないんです。

梱包するダンボール(カートンといいます)や包むビニール袋、発泡スチロール、同梱するマニュアル、電源コードやリモコンといった付属品、これらも作らなければなりません。

マニュアルは販売地域によっては数ヶ国語の表記が必要だったりします。カートンも強度がちゃんとしているものをつくらなければなりません。電源コードもすぐに壊れるようでは問題です。

こういった法令に準拠させることも“設計”業務の一つです。


またこの後の“製造”というプロセスに引き継ぐまでは“設計”がその進捗責任を負います。そのため試作品を作ったり、B2Bで法人顧客の場合は、顧客の導入審査に合格させるプロジェクトを牽引するといったことも役割になります。

このあたりは企業によっては別部隊がいて対応することもあります。


“設計”の段階になると、協力し合う部署が増えます。

事業計画の進捗を管理する管理部隊

品質保証のシステムを司る品質保証部隊

部品メーカーまたその間に入る資材部隊

試作をするために協力してもらう製造部隊

商品出荷を控えて販売の計画を作る販売部隊

部品情報や図面を管理する商品管理部隊

B2Bであれば法人顧客の窓口になっているカスタマーサポート部隊

などなど・・・

関係が増えるとその分、会議も増えます。

なので“設計”では技術力ももちろん必要ですが「時間管理」「優先順位付け」「協調性」といった要素がとても重要な要素となってきます。


このように「主業務」以外にも関連する業務が「商品化」にはたくさんあります。私が勤めていた企業では“設計”が最も広く多く業務をこなすところでした。

企業や部署によっては別の部署がこれらの業務の一部を担うところもあるでしょう。アウトソーシングとなるとまるごと他社に投げられます。

ただ「商品化」というだけあってこのプロセスが顧客を満足させるための性能を知る一番の重要なプロセスなのです。



次回は「製造」をご紹介します。

第3回「それぞれの役割〜基礎研究と開発」

第5回「それぞれの役割〜製造」

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