Columns|コラムシリーズ7【自分で事業を立ち上げたい人へ】全9回

第1回 自分で事業を起こすということ

 23年間勤めていた会社を退職し、起業して2年半近くが経ちました。

お陰様で実質2期目で黒字化を実現し、

すぐには餓死しないで済みそうだと、少々安堵しています。

こんな様子を見てか聞いてか、

「起業したいんだけど」とか「自分で事業をやってみたい」

というご相談をうけることがちょくちょくでてきました。

 開業して間もないので、これといって含蓄のある助言ができるわけではないのですが、

自分が経験したことが少しでもお役に立てればと思い、

簡単にコラムにまとめてみることにしました。


 「自分で事業を起こすこと」と「会社に勤める」こととは多くのことに違いがあります。

「人生観」の違いと言っても過言ではない、というのが私の印象です。

一番の違いは、「自分の代わり」です。

 私は会社に勤めていた時、事業責任者としての任務を持っていました。

顧客、取引先、関係部署それぞれの利益を最大化すべく、

文字通り身を粉にして働いていました。

しかし、上司からの辞令によって担当が変わりました。

その事業は別の人が担当することになったのです。

新しい担当者が入ったことで私はその事業の責を終えたことになります。

そして新しい担当事業の責任者として業務を遂行していきます。

それまでの事業がどうなろうと、極端な表現ですが「どうでもいい」のです。

新しい担当者が自分の代わりとして事業を遂行していきます。

 さて自分で事業を起こした時はどうなるでしょうか。

まずそもそも上司がいません。

新しい事業に取り組む際、従来の事業を他の人に任せることはあるでしょう。

でも任せたという責任は自分にあります。

従来の事業に何かがあったとき、顧客や関係者は「事業責任者」としてのあなたに責任を求めます。

事業を閉鎖あるいは売却でもしない限りあなたはこの責任から逃れることはできません。

仲間や同僚がいなくなっても最後の最後まで取り組む責任と覚悟が必要です。

その時自分の代わりはいません。なぜなら自分が最後の砦だからです。


 私の場合、私だけが社員ですのですべてのことを1人で行っています。

もちろんアウトソーシングをすることで業務遂行そのものをお願いすることはできます。

しかしアウトソーシングした先の結果は、結局は自分に返ってきますので自己責任です。


  どのようなサービスを展開していくかを生み出す「開発業務」

  サービスの内容を決める「設計業務」

  サービスを実践する「販売・サービス業務」

  顧客からの問合せに対応する「カスタマーサービス業務」

  顧客を獲得するための施策を生み出す「マーケティング業務」

  潜在顧客にアピールする「広告・宣伝業務」

  顧客に売り込む「営業業務」

  日々のキャッシュの出入りを管理する「経理業務」

  予算を決めて予実管理をする「管理業務」

  会社のインフラを整える「総務業務」

  事業判断をしていく「経営業務」


 会社にいるときはそれぞれの業務に担当がアサインされ、

自分もその一担当として業務を遂行します。

その担当について業務を遂行しますが、他の担当についてはアサインされた人が業務を遂行します。

そして結果についての責任はアサインをした上長が負います。

仮にどこかの担当に不測の事態が起こっても、代役をアサインし業務遂行が停滞することを防ぎます。

自分がその上長としても、その上に上長がいて、

最後は経営会議、株主総会またはオーナー会議といった法人所有者の裁量に身を任せることになります。

 自分で起業した場合、アウトソーシングや雇用により業務遂行はできますが、

結果責任は最終的に自分にきます。

特に1人でやっていたら業務遂行もすべて自分です。

 こんな時に風邪引いて寝込んでしまったら・・・

私のような会社ですとすべての業務が停止します。

もし交通事故にあって死亡したら、会社は存続できなくなります。

自分が会社員だった場合、自分が死亡しても会社は潰れないようになっています。


 なんか責任重いだけで何いいことあるの、と言いたくなりますね。

では自分で事業を起こす良さはなんでしょう。

なんといっても「自分の裁量で事業を進められる」ことにあります。

勤め人の場合、所属している組織のカルチャー、状況を元に

「正しい」「間違っている」といった判断がされます。

しかし本来ビジネスにおいては正しいも何もなく、

「どうしたいか」の一言につきます。正しいか正しくないか、ではなく、

どうしたいか、が判断軸になることが大きな違いです。

 私の場合、企業勤めのときは「計画された目標を実現する」ことがミッションでしたので、

計画された目標を実現させるための行動が「正しい」行動でした。

売上額、利益率が目標の指標でした。

売上額と利益率は大きければ大きいほど評価されました。

そこに自分の志向は無力です。

ときには自分の志向が「間違っている」と評価されてしまうこともあります。

 一方退職して起業した後は「高い質でサービスを提供する」ことが優位であり、

売上額と利益率は結果にすぎないので追いかけない、というスタンスをとっています。

もちろん自分が生きていくためには最低限の売上額や利益率は存在します。

あくまでもそこをクリアすることを前提とする必要はあります。

ただ、今は私1人だからできることかもしれません。

社員が増えて組織が大きくなってくると自分がやりたいように、

というわけにはいかなくなってくるでしょう。

それでも「どんな会社にしたいか」という意向は根幹でもあり、自分自身でもあります。



さていろいろなことを申し上げましたが、

自分で起業するということが、

会社勤めと大きく違うことは少しおわかりいただけましたでしょうか。

次回は、起業前に必要な「動機」についてお話したいと思います。



「第2回 まず動機」

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