Columns|コラムシリーズ10【ものづくりに見る価値の創造】全10回

第6回 それぞれの役割〜販売

前回は“製造”についてご紹介させていただきました。

今回は“製造”された商品を売る“販売”についてです。


部署としてはよく「営業」と呼ばれますね。第2回で紹介したそれぞれの役割の定義リストで“販売”は「商品を売って売上金を回収する」と定義しました。

そうです、商品を渡して対価を得る役割を担っています。


「商品を売る」には2つの意味合いがあります。

・ 新しい顧客を見つける

・ 既存の顧客に継続販売する

新しい顧客を見つけることは売上の増加に直接貢献できます。

一方既存の顧客に継続販売するのは、今の売上を維持する一方さらに売上の上乗せを図る両面性をもっています。

製造所で直販売する以外は製造業の販売は基本販売会社が顧客です。

それは自社のグループ会社かもしれませんし、量販店や商店街の小さな販売店かもしれません。

あるいは部品メーカーであればその部品を使うメーカーだったりするかもしれません。

すなわち主に法人が相手なので商品をもっていって「買ってください」「はい、買いましょう」なんてことはまずありません(^^)

商品を手にすることによる顧客側の魅力をお伝えしないといけません。

その上で、価格、納期、支払い期間(商品入手後いつまでに支払うか)、購入継続期間といった条件について一つ一つ詰めていきます。


私は営業の立場についたことはないのですが、半年ほどアメリカにあった販売会社の販売チームに配属されたことがあります。

私の部署が商品化したデバイスを使って最終商品にする法人向けに販売するビジネスでした。

私の役割はその法人に対する技術支援でしたが、チーム全体の会議などには参加させてもらっていました。


のんびり過ごした週末の余韻は月曜日の朝にたちどころに消えます。

月曜の朝一番で販売会議があるのです。

シリコンバレーのオフィスの会議室に営業以外のチームメンバー、そして複数回線が接続された電話の先にはアメリカ西海岸、東海岸、内陸担当の営業がいます。

最初はチームリーダーのICE BREAK。「週末友人がきてさ、一緒に買物したんだけど、そこでヘマしちゃってね」なんて笑い話でなごやかな雰囲気になります。

「ではそろそろ始めようか」というリーダーの投げかけでこちらの会議室にいる進捗管理の担当者が口を開くと雰囲気は一変しました。

「西海岸担当◯◯、先週の計画◯◯に対し実績◯◯、進捗率◯◯%」そうです、1週間ごとに売上の計画が設定されていて、その計画に達したかどうかを皆の前で公表されるのです。

そして計画に対して未達だった場合容赦ない質問がとびます。

「未達の理由は?」

「なぜそこで動きをとらなかったのか?」

「未達分はいつまでにキャッチアップするのか?」

日本ではよく「ノルマ」と言われることもあります。


「ノルマ」とは聞こえが悪いですが、実際は計画とか目標でもあるのでとても大切な指標です。

事業に関わる多くの人達が同じベクトルで動くには、計画とその実効性という信頼が不可欠です。

「計画が実現される」という信用の前提があってチームは動きます。


以前に紹介した“設計”はやることは、とてつもなく広いのですが論理的でもあり、ある程度時間を読むことができるので計画が立てやすい一面があります。

“販売”は人が相手であることもあり、売れる根拠が予めあることは極めて少ない環境にあります。


従って計画を立てにくい分野の一つではないかと思うのです。

「売る」という一つの行為ですが、計画を作りそれに沿うという点がこの“販売”の最も難しい点ではないかと感じました。


次に「売上金を回収する」です。

現金商売で商品を渡してすぐにその代金をもらえれば、売上金の回収は特別意識する必要はありません。

しかし企業同士の取引となるとほとんどが掛け金処理です。

どんな消費者向けの商品で、「お客様は一般ユーザーで現金だよ」といってもその商品を作った会社が直接ユーザーと取引するわけではありません。

販売店を通じてやっとユーザーにたどり着きますので、商品を作った会社は大概販売店と取引なのです。

そのため、売掛金がちゃんと回収できているかどうかを管理するのも、キャッシュフローという観点で“販売”の大切な役割でもあります。



これまでは時間の流れにそった、いわゆる“縦軸”ともなる役割をご紹介してきました。

次回からはこれら“縦軸”の役割を担う複数の組織を“横軸”として支える役割をご紹介します。

第5回「それぞれの役割〜製造」

第7回「それぞれの役割〜管理、物流、品質保証、資材調達、CS」

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