Columns|コラムシリーズ10【ものづくりに見る価値の創造】全10回

第3回 それぞれの役割〜基礎研究と開発

前回は“ものづくり”の全体の流れ、役割と方針についてご紹介しました。今回から数回に分けてそれぞれの役割についてご紹介していきます。まずは最上流プロセスに位置する「基礎研究と開発」です。


基礎研究と開発、ひいてはその次のプロセスである設計も含めて明確な定義や線引きがあるわけではありません。

ここでは私の経験から「こんな風に分担ができるのでは」というスタンスでご紹介させていただきます。


基礎研究は前回「世の中にない技術の種を発見あるいは創造する」部署としてご紹介しました。

新しい材料を発明したり、今までできなかった機能を出したりすることです。

例えばブルーレイの記録・再生に必要な青色半導体レーザー。これは1996年当時日亜化学工業に所属されていた中村修二氏が発表した技術です。

それまではDVDを記録・再生する半導体レーザーがあり、1枚あたり4.7GB(ギガバイト)の情報を記録することができました。

しかしもっとたくさんの情報を記録するには<半導体レーザーの発振する波長をもっと短くする必要があったのです。

短い波長(それが青色になります)を発振できる半導体レーザーです。そのためには、とにかく青色で発振できることができないと話になりません。

この世の中にない「青色で発振する半導体レーザー」を発明すること、これが基礎研究です。この基礎研究のゴールは「“世界で初めて”を実現すること」です。

「0から1にする」それが基礎研究のミッションになります。「0から1」を生むには“失敗”という名の多くの代償が必要です。

基礎研究を進めるには、当事者と監督者双方の忍耐が最も必要な要素なのではと思っています。基礎研究のマネージメントはとても難しいです。

結果を急いでも何も生まれないし、かといって野放しというわけにもいきません。ある程度の予算と期間を割り切って投入する覚悟が必要な領域ではないかと思います。


それに続く開発です。

前回の紹介では「技術の種を形にして機能を実現する」と定義しました。ここは基礎研究と違って結果が求められます。

基礎研究が「0から1」であるのに対し開発は「1から7」くらいでしょうか。なぜ「1から10」じゃないのか、って?実はこの後のプロセスである“設計”にも“開発”の要素があることが多いのです。

“開発”と“設計”の線引きもまたいろいろあります(^^)開発のミッションは「機能を実現する」です。

先に例に上げた青色半導体レーザーの場合ですと、青色を発振する半導体レーザーを使って1999年ブルーレイという規格をソニーとフィリップスが提唱しました。

中村氏が青色半導体レーザーを発表してから3年です。つまり“発明された”青色に発振する半導体レーザーを使って、ディスクにデータを記録再生する“機能”を開発したのです。

すでに機能を実現できる技術は存在するので「いかに実現するか」その内容が問われます。基礎研究に比べて時間軸を意識したマネージメントが要求されます。

とはいえ新しい機能を実現しようとしているので試行錯誤は必要なプロセスでもあります。そのため確実性とフレキシブルのバランス感覚が問われます。



次回は「設計」をご紹介します。

第2回「ものづくりにおける役割」

第4回「それぞれの役割〜設計」

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